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今回は,障害年金コラム②の「初診日について」に関する補足になりますが,初診日の特定の際の注意点についてご説明しようと思います。

 

複数の傷病がある方や病歴が長く通院していない期間があった方などの初診日の特定の際に注意していただきたいのは,「再発または継続」,「社会的治癒」,「相当因果関係」という考え方についてです。

(1)「再発」…傷病が治癒し,再び同一の傷病が発生した場合,過去の傷病と再発の傷病は別の傷病とされます。

(2)「継続」…治癒したと認められない場合,過去の傷病から引き続いているものとして同一の傷病とされます。

(3)「社会的治癒」…医学的には治癒していなくても,症状が安定し治療の必要がなく,社会的復帰をしている状態を傷病が一度治ったとみなすことです。

具体的には以下の3点をすべて満たした場合,社会的治癒と認められ,新たに発症したものとして取り扱われます。

①症状が固定し,医療の必要がなくなったこと。

②長期にわたり自覚的にも他覚的にも異常や病変が認められないこと。

③一定期間,普通に生活または就労していること。

(4)「相当因果関係」…前の病気やケガがなかったら,後の病気は起こらなかったであろうと認められる場合,相当因果関係ありとみて前後の傷病を同一の傷病として取り扱うことです。そのため,初診日は前の病気やケガの初診日となります。

相当因果関係ありとして取り扱われることが多い例は,以下のとおりです。

  ①糖尿病と糖尿病性網膜症,糖尿病性腎症,糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害,糖尿病性動脈閉鎖症)

  ②糸球体腎炎(ネフローゼを含む),多発性のう胞腎,慢性腎炎に罹患し,その後,慢性腎不全を生じたもの

  ③肝炎と肝硬変

  ④結核の化学療法による副作用として聴力障害を生じた場合

  ⑤手術等による輸血により肝炎を併発した場合

  ⑥ステロイドの投薬による副作用で大腿骨頭無腐性壊死が生じたことが明らかな場  合

  ⑦ 事故または脳血管疾患による精神障害がある場合

  ⑧ 肺疾患に罹患し手術を行い,その後,呼吸不全を生じたもの(肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても相当因果関係ありとして取り扱われる。)

  ⑨ 転移性悪性新生物(がん)は,原発とされるものと組織上一致するか否か,転移であることを確認できたもの

逆に,相当因果関係なしとして取り扱われることが多い例は以下の3つです。

  ① 高血圧と脳出血または脳梗塞(※医学的には,高血圧と脳出血は「因果関係」があるが,障害認定基準における「相当因果関係」はなしとされる。)

② 近視と黄斑部変性,網膜剥離または視神経萎縮

  ③ 糖尿病と脳出血または脳梗塞

 

例えば,先に発症した(A)とその後発症した(B)という傷病があったとして,Bの初診日で障害年金の請求をしたとします。しかし,審査の結果,Aから引き続いている傷病とされ,Aの初診日で請求をし直すこととなった場合,初診日が変わってしまうことにより,どのようなことに影響が出るかというと,もしもAの初診日の時点では納付要件を満たしていなかったとなると,請求ができなくなってしまうということ。また,Aの初診日時点では厚生年金に加入,Bの初診日時点では国民年金に加入という場合であれば,請求できる年金の種類(障害厚生年金と障害基礎年金(国民年金))まで変わってしまうということが考えられます。障害厚生年金は障害等級1級から3級に該当すれば受給できますが,障害基礎年金は1級か2級に該当で受給,さらに厚生年金と基礎年金では受給額などにも違いがありますので,初診日が変わることにより良い条件になることもあれば,逆に悪い条件になってしまうこともあるということです。

 

障害年金コラム(7)

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