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現在の長期雇用慣行(終身雇用)のもとでは、一度、「採用」してしまうと会社側から労働契約を終了させることは簡単ではありません。
「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」と判例(日本食塩製造事件 昭和50年4月25日)でも示されています。
逆に「採用」に関しては使用者側に広い裁量権が与えられており、「いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」(三菱樹脂事件 昭和48年12月12日)となっています。
そこで「問題のありそうな人物はそもそも採用しない」ということが、労務管理上、最も大切になります。事前に「危険の芽を摘む」という発想です。
中小企業における「余剰人員」は配置、部門転換が難しく、人件費(固定費)の負担増となるばかりでなく、他の「優秀」な従業員のモラル低下にも繋がるおそれがあります。
どのような人物(例、新卒者なのか中途採用なのか 営業の人材採用にしても社交的な人物がよいのかコツコツ慎重派の人物を求めるのか)を雇い入れるか?を、自社の社風や今いる従業員との兼ね合いを考慮して、あらかじめ社長自身が決めておくことが大切です。
実務としては、従業員の面接に社長、自らが立ち会い採用可否の判断を行うべきです。また社長の「想い」を「社長の言葉」で面接時に伝えることも大切です。
「想い」とは経営理念や従業員に「期待」すること、会社が目指すべき「将来の方向性」(ビジョン)などです。
あわせて、会社としての「最低限のルール」も面接時、社長が自らの言葉で伝えることが重要です。
「茶髪は禁止だよ」とか「お昼ご飯中の携帯電話の操作は止めてね」などでも結構です。
要するに、会社の「最低限のルール」が守れない人には、入社してもらわないということです。言い換えれば「会社のルールが守れないと思ったときは辞めてもらうよ」と伝えておくことでも良いと思います。
経営だけでなく、労務管理に対しても社長自身の「判断の拠り所」をもっておくことが最終的に自社に合致した「優秀な人材の確保」へと繋がります。
採用に際して
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